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【第1部】 第5話 不思議な夢

last update Huling Na-update: 2025-05-30 18:33:01

 私は自分の心が理解できず、思い悩んでいた。

 すると突然、ヘンリーが私を優しく抱き寄せた。

 背中に回された手に力が込められ、私は驚き、息が止まった。

「流華、君と出逢えて僕は幸せだよ。この幸運に感謝してる。

 僕もおかしいのかな、出会ったばかりなのに、とても愛おしくて。

 ……君と離れたくない」

 なぜかわからないが、そのとき私の頬を涙が伝っていった。

 それは今の私が流した涙というより、誰かの感情。

 誰? あなたは誰なの?

 私の中に、もう一つの感情が存在しているみたいだ。

「何を、しているのですか?」

 背後から、急に恐ろしい声が聞こえた。

 恐る恐る振り返ると、やっぱり彼だった。

「りゅ、龍!」

 声の主は龍。

 恐ろしい形相をした龍は、ゆっくりと一歩ずつこちらへと歩みを進める。

 彼はおどろおどろしい空気をかもし出していて、体中に負のオーラがまとわりついているようだった。

 こ、これはヤバイ。

「あのね、龍。これは、私がいけないの、私がっ」

「僕が彼女を部屋へ呼んだ。そして抱きしめた」

 ヘンリーは龍に向かって、堂々と言い放った。

 彼の手は私の腰を抱いている。

 そんな挑戦的に言わなくても!

 それに、そんな誤解を招くようなこと言わないで!

 私の心の叫びなど露知らず、ヘンリーは龍を見据えている。

 龍の放つ空気が、どんどんこの世のものとは思えない、とんでもないダークな空気に染まっていく。

 こんな龍見たことない、一体どうしたっていうの?

 なんとかしないと、ヘンリーが殺されるかもしれない!

 私はプチパニックに陥っていた。

 慌てた私は、とっさに龍とヘンリーの間に立ち塞がった。

「龍、落ち着いて!

 これは私が招いたことなの。眠れなくて、私がここにお邪魔したの。

 もういいでしょ? ヘンリーを怒らないであげて」

 私はおもいきり龍に抱きついた。

 なんでこんなことをしたのか、自分でもわからない。

 ただ、龍を止めたい一心だった。

「お、じょう……?」

 ヘンリーのことしか見ていなかった龍が、私へと視線を移す。

 すると、龍は急に正気に戻ったかのように慌て始めた。

「お嬢!? 何してるんですか!」

 私の行動に、龍は相当困惑している様子だった。

 取り乱したようにオロオロしながら、目をクルクルさせ、手をバタバタと動かす。

 龍にしては珍しい態度だ、これならイケる!

「龍がヘンリーに何もしないって約束するなら、離す!」

 交換条件を提示してきた私に、龍は言葉を詰まらせ黙り込んだ。

 私は龍に抱きつきながら、上目遣いで見上げる。

 すると、龍の瞳はあちこち彷徨ったあと、私から視線を逸らした。

「わかりました。……今日のところは、勘弁してあげます」

 真顔で顔を背け続ける龍。

 怒っているのか、何を考えているのかはわからない。

 しかし、すぐに許してくれてよかった。

 ほっと胸を撫でおろす。

「これからも、ヘンリーのことは大目に見てあげて。

 彼は何も知らないところへ来て不安なの。優しくしてあげて」

「…………」

 龍はなんともいえない顔になる。

 これはあれだ、すごく嫌という表情だ。

「もうっ」

 私は龍から離れた。

 龍はどこかほっとしたような表情をした。

 そんなに私にくっつかれているのは苦痛だったのだろうか、失礼な奴だな。

 それから私は二人と別れ、その日は眠りにつくことにした。

 先ほどまであんなに眠れなかったのに、今度はぐっすりと眠れたことに驚きつつ、私は不思議な夢を見た。

 空には見渡す限りの青空が広がっていた。

 太陽の光が優しく降り注いでいる。

 見渡す限りの綺麗な花々に囲まれながら、私は男性に寄り添い座っていた。

 豪華なドレスを身にまとい、私はどこかのお姫様のようだった。

 相手の男性は王子なのだろうか、彼もまた豪華な衣装を身にまとい、気品と風格があった。

 金髪の髪が風に揺れる。

 透明で白い肌が太陽の光に照らされ、美しさを際立たせていた。

 その青く澄んだ瞳が私を捉える。

 彼は私の手を握り、何かを一生懸命に伝えているようだった。

 しかしその内容はわからない。

 それでも、私は幸せに満たされていくような感覚に包まれていくのを感じた。

 彼が私をきつく抱きしめた。

 彼の愛情が伝わる。

 すごく温かくて……この感覚を私はどこかで感じたことが、ある?

 何だっけ? ああ、思い出せない。

 そのまま、私はまどろみの中へと誘われていき、気づけば意識を手放していた。

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Mga Comments (1)
goodnovel comment avatar
憮然野郎
龍がヘンリーや流華にどんな反応をするのか、ドキドキしながら見守っていましたが、今回は許してもらえたみたいですね…! ホッとしましたε-(´∀`; )
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